みなさん、子育ては楽しめていますでしょうか?
子どもを育てるということは想像以上に大変だと思いますが、
中でも、日々成長を実感できたら幸せですよね。
今回は、歯科が伝えたい!保護者だから観察できて、
歯並びよくなる秘訣をご紹介します!
子どもの虫歯
子どもの虫歯は、減っています!
厚生労働省の発表によると、3歳児の平均う蝕数
(虫歯の本数)は1989年には2.9本、2016年には0.54本と年々減少傾向にあります。
(参照:第1回歯科口腔保健の推進に係る
う蝕対策ワーキンググループ:う蝕罹患の現状-厚生労働省 )
近年、虫歯は減ったものの歯並びの悪い子どもたちが大変多くみられます。
歯科医療に従事していると歯並びやかみあわせが良くなかったことで、
歯を失うことになっただろう、と思う治療に向き合うことが多くあります。
日本人は、上の顎が狭くて、下顎が大きくなることが多くあります。
バランスがよくないと力がかかりすぎ、歯を失っていくこともあるからです。
歯並びはなぜ悪くなるのか?
顎が小さいから?両親の歯列不正が遺伝したから?
最近の調査では、
遺伝による歯列不正が全体の約4割、
残り6割は後天的な刺激が原因であると考えられています。
後天的とはつまり、子どもが成長していく過程で
受けた何らかの刺激により起こったということです。
それでは、一体お口の中で何が起こっているのでしょうか?
バクシネーターメカニズムについて
聞き慣れない難しい言葉ですが、歯並びと密接に関っています。
バクシネーターメカニズムとは、
歯並びや噛み合わせの治療方法のひとつのことです。
舌からの力によって、歯は内側から外側へ押されます。
そして反対に、口唇や頬の力によって歯は外側から内側へ押されます。
この内側からの力と外側からの力が、互いに相殺してバランスを取っているのです。
つまり、舌・口唇・頬の筋肉の力のバランスが上手く成り立つことで、
上下の歯がしっかりと噛み合っていきます。
この力のバランスがわるければ、歯並びが悪くなります。
こどもの成長期における口の機能は、ただ単に栄養摂取だけではなく、
噛む・飲み込む・話すといった機能の獲得に必要です。
また、小児期の口の機能が正常に発達しないと
歯並びや咬み合わせの異常を招くことがあります。
口腔機能発達不全症について
そこで口腔機能発達不全症が注目されています!
口腔機能発達不全症は、
「食べる機能」
「話す機能」
「その他の機能」
が十分に発達していないか、
正常に機能獲得ができておらず、明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく、
口腔機能の定型発達において個人因子
あるいは環境因子に専門的な関与が必要な状態のことをいいます。
口腔機能が十分に発達していない
つまり、お口の成長が上手くいっていない状態となるのです。
口腔機能発達不全症のチェック項目
こんな訴えが多くあります!
(こども本人は、自覚は少なく、保護者が気づくことが多くあります。)
・お口がいつもポカンとあいている
・いつもたべるのが遅い
・いびきがひどい 等
→ お口の筋肉の訓練を続ければ改善することがあります♪
(高頻度の口呼吸の場合、鼻疾患を疑い、
小児科、耳鼻科へ紹介します。必要に応じて言語聴覚士と連携することがあります。)
近年の子どもたちには食べ方にも問題があるという報告があります。
2015年に厚生労働省が行った「乳幼児栄養調査」の中で、
0〜2歳児の保護者で離乳食について「困ったことがある」という回答した方は74.1%。
(参照:平成27年度 乳幼児栄養調査結果の概要-厚生労働省 )
その中でもっとも多かった項目が
「もぐもぐ、かみかみが少ない(丸のみしている)」
という回答で、28.9%でした。
そして、「現在子どもの食事について困っていること」というアンケートでは
「食べるのに時間がかかる」という回答がもっとも多く、
「早食い、よくかまない」という回答は
2〜3歳未満で16.3%、3〜4歳未満で8.8%、
4〜5歳未満で7.8%、5歳以上で7.6%でした。
この回答から、保護者は食事をよく噛んで食べることへの大切さについて
理解はしているものの、子どもへの伝え方について悩んでいることが分かります。
そこで、赤ちゃんは、どうやって食べる機能を獲得するかをご紹介します。
食べる機能の発達ステップ1
ミルクを吸う(哺乳機能)
食べる時に口を閉じる(成人嚥下・捕食機能)
食べ物を舌で押しつぶす(押しつぶし機能)
食べる機能の発達ステップ2
食べ物を歯や歯ぐきですりつぶす(すりつぶし、咀嚼機能)
手で食べ物を食べる(手づかみ食べ機能)
遊具を使って食べる(食具・食器食べ機能)
乳幼児期は食べる機能の基本が獲得される時期で、
食べる機能は、ステップを踏んで一段一段「獲得して次に進むこと」が重要です。
機能が十分に発達していなかったり、
あるいは正常に獲得できていない状態だと、
飲みこむまでに時間がかかってしまったり、
うまく飲み込めなかったりします。
その状態を、口腔機能発達不全症と呼びます。
つまり、お口の成長が上手くいっていない状態となるのです。
︎口腔機能発達不全症をチェックしてみませんか?
離乳完了前には、こんなことがあります
・乳首をしっかり口にふくむことができない
・舌小帯に異常がある
・授乳時間が長すぎる
・スプーンを舌で押し出す状態が みられる
・離乳食が進まない
・やせ、または肥満である口腔周囲に過敏がある
など
離乳完了後には、こんなことがあります
・舌の突出がみられる
・歯の萌出に遅れがある
・機能的因子による歯列・咬合の 異常がある
・咀嚼時間が長すぎる
・食べる量にムラがある
・言葉の障害がある
・やせ、または肥満である
・睡眠時のいびきがある
など
最後に
乳幼児期〜小児期によりよい口腔機能を獲得し、
お口の周りの筋肉や機能を上手につかうことは、
歯並びやかみあわせや呼吸、姿勢、食べ方にも関係し、
生涯の健康寿命にも大いに関係するという報告があります。
また、乳幼児期は食べる機能の基本を順番に獲得し、
口腔機能を発達させることが、とても大切です。
歯は「食べる要」
子どもたちの正常な歯並び、虫歯のない健康な口腔を育てることは、
日本の健康な未来につながっていくことだと思います。
一度、お子さんを観察してみてください。
もしかすると、「うちの子に当てはまる!」
という方もいらっしゃるかもしれません。
さらに、子育て奮闘中のみなさんに、歯科の知識を少しでも
ご存知いただくことで、お子さんを観察していただき、
きづいたことを早期に歯科でご相談いただくことができたら幸いです。
「子どもの食べ方や歯のこと、お口の成長が気になる!」
と思われた方は、 歯科を頼って、ご相談ください。
参考文献
子どもの咬合を考える会 不正咬合を予防する子育て10ヶ条 ~新生児期・乳幼児期編~
(歯科衛生士 June 2019 ;43:20‐33 )
口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方 (令和2年3月 日本歯科医学会)
日本老年歯科医学会 第33回学術大会 シンポジウム4 学術シンポジウム2:生涯における口腔機能の維持を考える ~青年期から壮年期には何が起こっているのか?~