「歯ぎしりをしていましたよ」と、家族や友人などから、指摘を受けたことはありませんか?
眠っている間の歯ぎしりは、誰にでもみられる現象で、健康な人でも疲れているときなどには、1回程度することがあり、通常は10分か15分程度で収まります。
歯ぎしりが常習の人の場合、毎晩、それも1時間以上も続くことがあります。しかも、ガムを噛むときの数倍~10倍の強い力で、歯をこすり合わせています。
そのため歯が欠けたり、割れたりすることがあります。歯茎にも強い力が加わります。そのため、歯周病を悪化させる原因にもなります。
それだけではなく、あごやその周辺の筋肉に障害を引き起こしたり、さらに睡眠時無呼吸症候群との関係も深いことがわかってきました。
歯ぎしりくらい…と思われがちです。ですが、常習の場合には症状を悪化させないために、予防したり、必要に応じて治療することも大切になってきます。
ただ、歯ぎしりは睡眠中のことなので、自分ではなかなか気が付きません。
もし、次のようなことがあったら、常習になっている可能性があるので注意しましょう。
• 食事のときに口を開けにくいことがある。
• 昼間でもふと気付くと歯を噛みしめていることがある。
• 下の歯の内側の歯肉に骨が盛り上がったところがある(※1)。
• 家族や友人などから、1年に2回以上歯ぎしりを指摘されたことがある。
• 朝起きたとき、あごにこわばりを感じることがある。
(※1)歯ぎしりを繰り返すと、歯を支える骨が影響を受け、盛り上がることがあります。下の歯の内側の歯肉部分は骨が出っぱりやすいので、歯ぎしりを知るサインとなります。
歯ぎしりの原因について
1.心因性のストレス
歯ぎしりは心因性のストレスなどが原因で発生します。環境に変化が起こる時、比較的多くの人が歯ぎしりを経験します。歯ぎしりはこのように、誰の身にでも起こる可能性があるもので、ちょっとした変化や心への負担がきっかけとなって起こります。
2.歯並びが悪い
歯ぎしりは歯並びのいい人でも発生しますが、実は噛み合わせが悪いと、それが歯ぎしりの原因になることがあります。噛み合わせが悪いと、歯の摩擦が大きくなります。それが原因で、寝ている間に歯ぎしりが発生することがあるのです。
3.虫歯や歯周病が急に進行する
虫歯や歯周病が急に進行することがあると、歯が溶けたり歯茎が下がったりして噛み合わせに影響が出ます。噛み合わせが悪くなれば、上で述べたように歯ぎしりしやすい状態になるのです。
4.食いしばりのクセがある
日頃から力を入れて重い荷物を持つなどの習慣がある人は、食いしばり傾向にあります。就寝中も筋肉が緊張し勝ちになり、歯ぎしりが発生しやすくなります。
もし、日頃から重い荷物などを運搬する仕事をしていたり、介護職などで入所者の人を抱きかかえたりするような仕事をしているなら、それが食いしばりを発生させて、歯ぎしりへと発展させている可能性があります。
5.顎の周りに急激な変化がある
上記以外の何らかの理由で顎周りに急激な変化があると、それが原因で歯ぎしりが発生しやすくなります。急な変化は特に噛み合わせに悪影響を与えるのです。
6.歯ぎしりの原因はまだまだ不明点が多い
実際、歯ぎしりの原因は確実なものがありませんが、考えられる原因はストレスと噛み合わせです。この2つにつながる要因があれば、それが間接的な原因となるのです。
確かな原因は追求できないかもしれませんが、もし、思い当たることがあるなら、その原因を排除する努力をしてみましょう。
歯ぎしりの治療とは
1.ストレスの解消
ストレスがある場合は、ストレス解消を積極的に行うといいでしょう。学校入学や転職など、環境が変化した際には、少し注意して過ごしましょう。リフレッシュする時間を持つ、休みを取るなど、できることでかまいません。
大切なのは、歯ぎしりをしている、それがストレスかもしれないと自覚することです。日頃から注意をしておけば、歯ぎしりがストレスのバロメーターとなり、自己管理のヒントになるかもしれません。
もし、あなたの生活の中で強いストレスがあるならば、心療内科や精神科などで一度診てもらうことも視野に入れておきましょう。
歯ぎしりとの関係も合わせて診てもらえれば、専門的な見地から的確な改善法を見つけられるはずす。
2.マウスピースでの対処療法
歯ぎしりをしてしまう場合は、スプリントと呼ばれるマウスピースを使って歯がダメージを受けないように防護することができますが、どんなマウスピースでもいいわけではなく、必ず歯医者さんで自分に合ったマウスピースを作ってもらってください。
既製品のマウスピースが市販に販売されていますが、噛み合わせや歯ぎしりの悪化の原因になることもあります。なので、必ず自分専用のマウスピースを使うようにしてください。
3.歯列矯正で歯ぎしりのリスクを減らす
噛み合わせが悪いと、ある一部の歯だけに負荷がかかってしまうため、歯列矯正で歯並びや噛み合わせを整えて、歯ぎしりしにくいかみ合わせへと矯正するといいでしょう。
また、噛み合わせが整っていれば、たとえ歯ぎしりしても歯ぎしりのダメージを最小限に減らせるようになります。悪い噛合せでは大幅に歯が削れてしまったりするので、事前にできる工夫をしておきましょう。
4.自己暗示療法で改善を
歯ぎしりを行わないようにしていくなら、自己暗示療法を行ってみるのもいいでしょう。自己暗示療法は、以下のようなやり方で行います。
①唇を閉じます。
②そのまま上下の歯を離しましょう。
③顔〜肩の筋肉の力を抜きます。
歯ぎしりや食いしばりは、必ず上下の歯がすり合うようにかち合ってしまう状況です。自分で意識して上下の歯と歯が触れないように自己暗示療法を行えば、歯ぎしりや食いしばりの癖は減っていくでしょう。
5.咀嚼筋のマッサージ
歯医者さんによっては、筋肉のマッサージをすると効果があるとしています。ものを噛む時に使う咀嚼筋を、頬と口の中の両側からマッサージします。咀嚼筋のこりをほぐし、歯ぎしりを緩和させましょう。
6.ボツリヌス菌注射治療
注射によってボツリヌス菌を咬筋へ注入し、緊張した筋肉をほぐします。これにより歯ぎしりを緩和させます。
まとめ
歯ぎしりの原因が「嚙み合わせの悪さ」にあった場合は、矯正治療で治せる場合があります。矯正治療で歯並びをしっかり整えれば、嚙み合わせの悪さが解消され、歯ぎしりが起こらなくなるでしょう。
もちろん、歯ぎしりの原因が嚙み合わせの悪さではなく、ストレスなどであったときには矯正治療で治すことはできないため、ストレスが原因の場合、歯ぎしりを治すにはストレスを解消するしかありません。
自分がどのようなストレスを抱えているか向き合うことが重要です。そのため、歯ぎしりの治療にはその原因が何であるかを解明する必要があるでしょう。