近年、インプラント治療は歯を失った方にとって非常に有効な治療法となっています。
しかし、インプラント治療を受ける際にはいくつかの注意点や条件が存在します。
今回はその重要なポイントを整理し、治療を受ける前に知っておきたい情報をお伝えしします。
1.年齢制限について
インプラント治療を受ける際には年齢制限があることをご存じでしょうか。
成長発育中の子供には、インプラント治療は基本的に適していません。
現在のインプラントは顎骨と結合していくため、発育途中の顎骨に埋め込むと、骨の成長に伴ってインプラントが埋没してしまう可能性があります。一般的に、女性は18歳、男性は20歳を過ぎて骨の成長が止まるとされ、そのタイミング以降に治療を始めることが推奨されます。
そのため、インプラント治療は主に歯を失う40代後半から60代の方々に多く行われています。ただし、高齢者でも健康状態に問題がなければ治療が可能です。
2.持病(全身疾患)がある場合の治療可否
インプラント治療は手術を伴うため、すべての患者が受けられるわけではありません。
心疾患が重い方や、体調が不安定な方には治療が難しい場合があります。
また、糖尿病の患者は、手術後の傷の治りが遅く、感染のリスクが高まることがあります。さらに、糖尿病によって骨を作る細胞の機能や数が低下し、インプラントとの骨結合がうまくいかないこともあります。血糖値がコントロールされていない場合、治療は延期されることが一般的です。
また、骨粗しょう症がある方も注意が必要です。
特に50歳以上の女性に多い骨粗しょう症では、骨が軟らかくなりがちで、インプラント治療のリスク因子となります。しかし、最新のインプラント技術を使うことで、骨との結合を助ける事が可能です。
ビスホスホネート製剤を使用している患者には顎骨の壊死のリスクが伴うため、治療前に主治医とよく相談することが大切です。
3.金属アレルギーの有無
インプラント治療においては、チタンを主成分とするインプラント体が使用されます。チタンはかつて「金属アレルギーを引き起こさない」とされていましたが、実際にはまれにアレルギー反応を引き起こすことがあります。
特に、他の金属にアレルギーがある方はチタンにもアレルギー反応を示す可能性が高く、事前にパッチテストや血液検査を受けておくことが推奨されます。
自分の体に適した素材を使うことが、インプラント治療の成功に繋がります。
4.喫煙と治療リスク
喫煙はインプラント治療において大きなリスク要因となります。
喫煙によって血液の流れが悪くなり、治療後の傷の治癒が遅れるだけでなく、骨を作る細胞の増殖や分化にも影響を及ぼします。その結果、骨の治癒が遅れインプラントの結合がうまくいかない場合があります。
実際、喫煙者と非喫煙者ではインプラント治療の成功率に差があることが多くの研究で報告されています。手術後だけでなく、治療終了後も禁煙を続けることが治療の成功を保つためには重要です。
インプラント治療は、生活の質を向上させるための有効な手段ですが、治療を受けるにはいくつかの条件やリスクをしっかりと理解しておくことが大切です。
治療前には、医師との十分な相談と検査を受けることをお勧めします。